『カタカナの“ヨコハマ”』
実家が東京・下町の洋品店だったオレ。ガキの頃、近所の商店会主催の家族慰安旅行というイベントに何度も連れて行かれた。まだカラオケなんてない頃の観光バスの車内で、商店会のオトナ達が酔っ払っていろんな流行歌を披露するのが恒例だった。
横浜方面へのある日帰り旅行の時、典型的な下町生まれで“お調子者”だったウチの親父が「、んじゃあ、ご当地の曲ってコトで…」と、いしだあゆみさんの『ブルーライト・ヨコハマ』を泥酔して熱唱した。昭和歌謡の大ヒット曲をオチャラケてエロく歌って大ウケ。歌詞に直接的な“エロス”は登場しないものの、子供心に「どうやらこれは淫靡な曲なんだろうな…」と本能的な直感で察した。得意げに歌ってる親父が、そりゃもう恥ずかしいの何のって…
なのに近所の肉屋や八百屋のオヤジ達が悪ノリして「、さっ、今度は洋ちゃんも歌って!」なんて無茶振りしてきちゃって、バスの窓から外を眺めて頑に拒否したのを今でも鮮明に覚えてる。それ以来『ブルーライト・ヨコハマ』は、オレのトラウマ的な曲となった。幼少時代から目立ちたがり屋だったけど、おかげで人前で歌うのは苦手だったもんな。
そんなオレがちゃっかりロックミュージシャンになってるんだから、人生って解らん。昨年ソロ名義での活動の1つとしてアコースティックツアーをやった時、どうしても歌いたかった曲をセットリストに交えた。『ブルーライト・ヨコハマ』だ。自分のトラウマ・ソングなだけじゃなく、純粋に昔から大好きな曲なのだ。
今は亡き親父の血をまんまと引き継いじゃってる“お調子者”のオレは、横浜に限らずツアーで行ったどこの土地でも、あの時の親父のようにちょっとオチャラケながらエロく歌った。
何かと縁があって他にも想い出がたくさんある場所だけど、オレにとっての『横浜』は、カタカナの“ヨコハマ”だ。
(あっ『、港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』もカタカナだね!)