『洋品屋の洋ちゃんその2』
実家が洋品店だったオレ。「お小遣いあげるから…」っていう甘い言葉につられて小学生の頃はちょいちょいお手伝いしたっけな。例えば冬休みは“御歳暮”や“御年賀”として販売するタオルとかを箱詰めしたり包装したり。時には商品の在庫を数えたりと様々。中でも楽しかったのは、お店で売る商品の仕入れだ。
夏休みとかになると両親も東京生まれのオレは、帰省する故郷も無く暇を持て余していたので、オフクロにお供して都心の問屋街に仕入れに行き、荷物運びとかを手伝うのだ。ほとんどの問屋は
「シロウトさん(一般のお客さん)への小売りお断り」なので、何だか小さな優越感に浸れたし、大した手伝いもしないくせに一丁前にオトナな気分も味わえた。デパートのように大きい問屋の各フロアで一通り仕入れを終わらせると、もう一度子供服やメンズのフロアに戻り、「ほら、好きな服選んで来なよ!」とオフクロに言われる。そう、靴下からパンツからトップスからボトムス、ベルトやパジャマまで、何でも自由に選ばせてもらい買ってもらえた。その時ばかりは<洋品屋の洋ちゃんの特権>を存分に堪能できた。普通小学生ぐらいじゃ親が選んだ服を着せられちゃうもんね、今は違うのかな?決して裕福な家じゃなかったけど、さすがに洋品店だけあって着るモノだけはキチンとさせられてたな。未だに洋服が大好きで、イイ歳して相変わらず私服やらステージ衣装やらをジャンジャン買いまくってるのも、我ながら頷けるよ…
そんなワケで高学年ともなれば、流行の先端まではいかないにしてもクラスの同級生が羨むような、オトナの流行りをパクったような服を生意気に着たりしていた。今思うと小学校での広告塔だったのかな?同級生がマネして買いにくるのが狙いだったりして!?
そうそう、家庭訪問に来た担任の先生に、「これからもこのバカをよろしくお願いします!」と、ウチの親父が店の商品のハンカチやら何やらをプレゼントしちゃったりしてたな。これって完全にワイロだよね?