『洋品屋の洋ちゃんその1』
オレは東京・下町の洋品店の長男としてこの世に生を受けた。
『フーテンの寅さん』的に言うならば「、姓は広瀬、名は
洋一。人呼んで“洋品屋の洋ちゃん”と発します!」ってカンジ。小学校の授業で“自分の名前の由来を親に訊いてくる宿題”が出た時に、店で忙しく働く親父に「そりゃおめぇ、洋品店の長男だから“洋一”だよ!決まってんだろ!?」と即答された。翌日の授業でそのまんま発表したら、案の定笑い者だ。ちなみに実弟は「洋二」じゃなく、全く別の名前をもらってる。商店街の中に家がお店をやってる同級生や友達が何人かいたけど、オレみたいに命名されたヤツは一人もいなかったな。つうかネーミングの発想が江戸時代っぽくない?しかも誕生日は4/19(よういちくん)だ。ここまでくると開き直るしかなかったっす…
そんなわけでガキの頃は商店街を歩けば「お、洋品屋の洋ちゃん、元気かぃ?」と声がかかった。八百屋も肉屋も酒屋もパン屋も米屋も豆腐屋も魚屋も(実際にこの順番で並んでた。ちゃんと覚えてるもんだね・笑)、どんなお店にも面が割れてたな。
両親共働きだったから、よくおつかいを頼まれたりしたっけ。パン屋でパンを買って肉屋に寄ると、おばちゃんが「あら、洋ちゃん、おつかい?待ってて、揚げたて持って行きな!」と、コロッケやメンチに更にオマケまでしてくれる。アツアツの揚げ物をパンに挟んでチャッチャと食べるっていう、即席で時間の遅いお昼ゴハン。サイコーに旨かったな。
こんな環境で育ったからか、アルバイトも接客業しか長続きしなかったし、ゴチャゴチャとお店が並んでいる街や海外のフリーマーケットとか大好きだし、未だにネット通販よりお店で直接のショッピングが好きだったりするのだ。『三つ子の魂百まで』ってこういうこと?え?ちょっと違う?…